サッカー蟻地獄

ガチだったこともあるサンフレッチェ広島サポーター&割とガチな飯田里穂さんファン&割と長い距離を走る自転車の話、などをしています

サッカー選手を正しく売れるようになるには

私の大好きな移籍金の話。ちなみに、「サッカー選手の正しい売り方」は読んでません。

Jクラブは選手の海外移籍で正当な額を手にしているのか。(Number Web)

2009年にJリーグ独自の移籍金体系*1からFIFAルールに則った移籍金体系に変わってから、確かに記事にあるように海外移籍の際に移籍金を取れていないケースが多く見られます。広島では槙野(→ケルン)、チュンソン(→サザンプトン)ですね。今回は、広島における移籍金ビジネスを考えてみたいと思います。

私は、広島が世界で移籍ビジネスをしていく上で必要な移行・準備期間だと思っています。その理由・背景を書いてみます。

国内移籍ビジネスは確立できており、移籍金をとれている

広島から移籍した選手で移籍金をきちんととれているケースとしては久保の推定2億7000万円*2、俺の駒野の2億8000万円*3があります。逆に取れなかったケースとしては、柏木陽s(ryの0円*4(→浦和)ですね。他のケースは、ほとんどが広島側で移籍金0としてリリースしたと考えるべきでしょう。

記事の中にもある移籍金をとれたケースを見てみると、

昨年、ガンバ大阪からバイエルン・ミュンヘン期限付き移籍した宇佐美貴史のケース。推定150万ユーロ(約1億6000万円)の買い取りオプションについて「信じられない安値」と記している

鹿島アントラーズ内田篤人シャルケに移籍させた際、1億5000万円の移籍金を受け取った。FC東京長友佑都チェゼーナに移籍させ、インテルへと渡ったことで2億円近い金額を手にしたとされる。

とある。日本代表で中核選手だった内田、長友のケースと比べても、日本代表に呼ばれ続けていたが当落線上だったタイミングでの移籍だった久保、岡田監督就任後に(当の内田、長友の台頭で)出場機会が減っていた駒野がそれぞれ彼らよりも1億円以上高い移籍金を受け取れたのは、レンタル料を差し引いても国内での移籍ビジネスが確立していたからでしょう。もっとも、交渉がやりやすい、と言うことでもあるでしょうが。

年俸抑制、引き止めの戦略が目的

よく「海外移籍の場合は違約金0とする」みたいな条項が契約の中にある、という話があります。実際にあるケースもあるのでしょうが、クラブ側はなぜ、あるかどうかもわからない海外オファーがあった場合、などという契約を結ぶのでしょうか。
契約は当然交渉を含みます。選手は契約を取らないとプレーできないので、際限なく年俸を釣り上げられるわけでも、いくらでも条件を求められるわけでもありません。ここは要求し、ここは妥協する、ということが必ず出てきます。「海外移籍の場合には違約金0オプション」でクラブへの引き止めや、このオプションを入れるんだから(=移籍金0なんだから)年俸はこのくらいにしてよ、という年俸抑制という側面はあるかと思います。言い換えれば、あるかどうかわからない海外移籍の確率と、確実に効果のある年俸抑制を天秤にかけている可能性はあります。特に慢性財政難の広島では確実な経費削減(=利益率100%の売上とも言える)は大きな魅力でしょう。

移籍金を捨てて下部組織のスカウト力を上げる戦略。現在は「海外移籍の実績作り」という段階

広島で初めて直接海外移籍した選手は、外国人選手を除けば槙野(2010年シーズン終了後)が初めてです。このケースは1年契約だったため、いずれにしても移籍金は取れませんでした。しかし、国内移籍のオファーを数多く断っている状態で海外移籍を容認としている状況を考えると、複数年契約だったとしても相手クラブの言い値、もしくは無料で出した可能性が高いと思っています。
広島所属の選手が海外に移籍していく、という事実は、選手獲得に大きな効果をもたらします。広島でプレーしたら海外へのステップアップできる成長ができるという事実は非常に強力です。特に、槙野の場合はジュニア、ジュニアユース、ユース、トップと全カテゴリーに所属して成長して海外移籍をした初めてのケースです。こういうケースが出てくると、下部組織、特にユースでのスカウティングは非常に有利になります。これまではトップに昇格しやすい、集中できる環境で人間的にも成長できる、というあたりが強みでしたが、これに海外に行けるほどの選手に成長できる環境、と言うのが追加されました。これは大きい。
次にやっていくべきことは、槙野という選手だったから移籍できた、ということではなく広島という環境が成長させたという実証をしていく必要があります。そのためには日本代表クラスでも1億5000万円(国内移籍なら3億クラスでしょう)の移籍金を取るか、広島の移籍ビジネスの根幹である下部組織のスカウト力を取るか、というところの選択で、今は後者を採っているという理解のほうが良いでしょう。

広島は選手の海外移籍で正当な額を手にできるのか

移籍金が正当な額かという問題については、契約を締結しているのでそりゃどう見ても契約的には正当なのです。移籍先からすると「うおお、割安に買えた!俺SUGEEEEEEE」でしかありません。冒頭の記事で言う「正当な額」を手にするには、市場価格を知ったり、誰が欲しがっているのか(=誰が高く買ってくれるのか)といったマーケット感覚をクラブとして身につけなければなりません。
その実現には色々な戦略がありますが、広島では移籍事例を多く経験することが必要、と考えて移籍ビジネス市場に身を置いているのでしょう。

*1:端的に言うと単年契約でも移籍金が発生する

*2:これで吉田の練習場にコートがひとつ増えた

*3:これで赤字を免れた

*4:契約満了時でユースからの昇格だったのでトレーニング費4800万円は頂いた