サッカー蟻地獄

ガチだったこともあるサンフレッチェ広島サポーター&割とガチな飯田里穂さんファン&割と長い距離を走る自転車の話、などをしています

ペトロビッチ体制の終焉は暗黒時代の始まり(1)

ペトロビッチ監督が留任しないことが確定した今、僕は、多分サンフレッチェのファン・サポーターをやり始めて3回目の危機を感じています。1回目はJリーグバブルが終わった後、高木や森保が広島を離れた時。2回目は2006年の債務超過直前の状態になった時。そして3回目が今回です。
なぜそんなに危機を感じているか、ということを書こうと思ったのですが、おそらくクラブ側から切った→クラブに財務的な問題がある、というのが普通の考え方です。その結果、コーポレートファイナンス的な話になってしまったので2回に分けて書いてみます。

話の前に

僕は、広島を暗黒時代にしたいわけじゃない。
でも、今後数年間の暗黒時代は覚悟するべきで、覚悟した上でサポはどうしたらいいのか、を書きたいと思っています。

今回の話の流れ

こんな流れで話を進めたいと思います。
・何が危機なのか
・危機を解消するには
・その手を打つとクラブはどうなるのか
・サポはどうしたらいいのか

今回の危機

前回と同じ、債務超過です。
債務超過は文字通り、「自分が持っている資産より負債が多い状態」ですが、債務超過になると、基本的には金融機関からお金を借りられなくなります*1。従って、倒産しやすくなります*2から、なんとしてでも避けなければならないことの一つです。

財務諸表上は「資本金より累積損失が多い」とも言いかえられます*3Jリーグ公開の財務諸表によると、広島は2010年の決算で純資産が8,000万円。つまり、あと8,000万円赤字が出たら債務超過に陥る状態でした。

そして、広島の営業利益の直近5年平均は▲1.8億円。平均通りで推移すると、確実に債務超過に陥るというわけです*4

前回の債務超過の危機はどう解決したか?

前回の危機、2007年の時はデオデオが5億円の増資を行いました
この時は、減資をして株主に迷惑をかけることはできないということで増資という説明がなされています。
それまではマツダ筆頭株主だったのを、デオデオが5億円出資することで筆頭株主が交代し、名実ともにデオデオエディオングループ)が経営の主導権を握ったということになりました。ただ、この持株比率は絶妙で、デオデオが40%未満の持株比率のため、子会社にならない=損失を全部連結しなくてもいいというギリギリのラインの出資でした。

今回の対応は?

債務超過の解決方法は大きく4つあります。
・利益でちょっとずつ返していく
・第三者割当増資
・デット・エクイティ・スワップ(DES)の実施
・債権放棄
が、利益で返せる見込みがあるくらいならこんな話はしないので、残り3つについて考えてみます。

増資で対応できないのか?

2007年に5億円の増資を行ったものの、4年後に再び債務超過の危機に陥っています。そのため、債務超過寸前→「増資してください」→債務超過寸前→「またお願いします」は難しいと思いますし、この5年で株価が3分の1まで低迷しているエディオングループから、再度数億円規模の増資は難しいと思います。
また、仮にデオデオが増資できたとしても、確実に持株比率が40%を超えてしまいます*5。今後利益が確実に出るという状況でない限り、増資には応じないと思われます。

DES(Debt Equity Swap)で対応すればいいじゃん

債務超過になりそうなのであれば、その債務を株式に変えて(デット・エクイティ・スワップ債務超過を解消できます。出資者が純粋に投資目的であったり、会社が上場したりしているとDESを選択しやすいですね。

しかし、広島では2つの理由で選択しにくいです。

(1)株主構成が大きく変わる

融資をしているのは銀行だと思いますが、広島の主要株主に銀行はいません(株主にはいますが)。数億円単位のDESを行うと、10%程度の持株比率になります。
また、仮に三菱東京UFJ銀行*6からの融資をDESしたとすると、サンフレッチェの主要株主に突如東京・名古屋が地元の会社が入ってくるわけです。Jリーグの株主は「地元」というのが重要ですから、そのような選択をするのは現実的に難しいのではないかと思います。

(2)減資が可能であれば、減資の前にDESはありえない

そもそも、非上場企業であるサンフレッチェの株式を取得したところで、株式売却や値上がり益を狙うことは難しい。そのため、DESとはいえ債務放棄に近いことになりますし、累損21億、負債9億という状況では、数年後であっても確実に減資が待っていますのでまあ・・・むずかしいよね。
というわけで、減資の後じゃないとDESには応じないと思われます。その方が持株比率が高くなりますしね。

債権放棄は?

債権を株式という資産に変換することで資産がわずかでも残るDESにも応じられないという予想なのに、資産が全く残らない債権放棄はありえないですね。

じゃあ無理なんじゃね?・・・いえいえ。

というわけで、債務超過の危機を完全に回避する方法はなくなってしまいました。しかし、債務超過を解消しやすい状況には出来ます。その方法は、
・増資をされやすい状況にする*7
・累積損失(累損)を0にする/なくしやすい状況にする
ということになりますが、これを可能にするのが減資という手段です。

減資って何よ

資本金を減らすことです。出資されたお金は使ってしまいますが、減資を行うことで過去の損失をカットできます。徳政令っぽいのですが、違うところは「現実の負債はリセットできない」ということ。あくまで「負債を返しやすくなる」だけです。累損が多いと「まだ過去の投資を回収してないよ!」ってことで新たな投資もしにくいですし、会社の価値としてもトータルで利益を出しているのか、損失を出しているのかによって融資や投資判断が異なってきます。

サンフレッチェで減資をするとどうなるか

減資によって累損の一部を減らそうとするとこんな感じです。

あれ?もっと減資したら累損ゼロにならね?って思った人は正解。去年の決算であれば、96%減資すれば累積損失を0に出来ます。

こうなると、利益が出れば配当も期待できる*8わけですから、より増資を募りやすくなります。そして、このあとに改めて増資が実現すると

こうなって、これで健全な会社に生まれ変わるわけです。わーい。

次回

今回はここまで。次は減資したらサンフレッチェはどうなるかということを書きたいと思います。健全な会社にはなれますが、減資という大ナタの副作用は大きいのです。

続きはこちら

*1:正確には、非常にお金を借りにくくなります、ですが

*2:倒産は支払う現金がなくなることなので、いくら債務超過でも現金があるかぎり倒産はしません

*3:資産=負債+資本=負債+(資本金+累計損益)なので、資産<負債ということは資本がマイナス、つまり資本金<累損ということ

*4:とはいえ、利益をだそうとすれば出せなくはない体質ではあるので、債務超過にならない程度に損失を抑えてくるとは思います

*5:40%未満は出資比率に応じて損益を連結すればいいので影響は少ない

*6:確かエディオンのメインバンク

*7:以前もJリーグ鳥栖に対する支援条件として「100%減資」を挙げていましたね。http://www.47news.jp/CN/200404/CN2004042001003822.html

*8:累損がある状態では配当は期待できないですからね